しじみとアデノシンで疲労回復(しじみに含まれるアデノシン)
しじみが含有するアデノシン
しじみは疲労回復効果のあるオルニチンや、「神経のビタミン」と呼ばれるビタミンB12をはじめ、ビタミンB群やビタミンE、必須ミネラルが非常に豊富な食品です。
様々な栄養素を含有するしじみですが、最近注目を浴びているアデノシンという成分も含有しています。
アデノシンは、厚生労働省が定める必須栄養素に含まれていないため、一般的にはあまり知られていませんが、私たちの体でとても重要な役割を果たす成分です。
今回は、しじみに含まれるアデノシンとはどのような役割があり、どんな効果をもたらすのか、お話します。
アデノシンとは、DNAやRNAを構成する核酸塩基の一つであるアデニンと、RNA(リボ核酸)の糖の部分であるリボースが結合した物質です。
通常、単体で生体内に存在することはなく、多くの場合は生体のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)の形で細胞内に存在します。
また、細胞にはアデノシンの受容体があり、細胞間の各種情報伝達に関わっています。
そのため、特に神経系の細胞に多く存在します。
アデノシンの効果
アデノシンには以下の効果があります。
- ATPとしてクエン酸回路でのエネルギー生産
- 肝臓で解毒作用のあるグルタチオンの原料となる
- うつ病など精神病の改善
- 軟骨の生成
- 血行促進による発毛・育毛効果
私たちが生きていく上で、エネルギーの生産場とされているのが、細胞内のミトコンドリアにあるクエン酸回路です。
アデノシンは体内でリン酸の3分子がついたATPとして存在し、酸素と共にミトコンドリアに取り込まれると、リン酸が1分子乖離してADP(アデノシン二リン酸)となります。
これがクエン酸回路と呼ばれるもので、この化学反応によってエネルギーが発生します。
ADPは再びクエン酸回路に取り込まれ、リン酸分子と結合することでATPが生産され、再びエネルギー源として使用されます。
つまり、アデノシンが無ければ、私たちはエネルギーが生産できず、生きていくことができません。
肝蔵では体内に取り込まれてしまった有害物質を解毒する役割があります。
特に、重金属など排除が難しい有害物質の排泄に効果を発揮するのが、肝臓で生産されるグルタチオンというたんぱく質です。
グルタチオンは有害物質が肝臓に至ると、それと抱合(結合すること)して無毒化し、体外に排泄します。
グルタチオンは必須アミノ酸のメチオニンと、ATPが結合したSAMe(Sアデノシルメチオニン、通称サミー)という物質を元に作られます。
アデノシンが無ければ、重金属など有害物質を体外に排泄できなくなります。
脳では、快の感情を司りやる気を起こさせるドーパミンや、「幸せホルモン」と呼ばれ精神の安定をもたらすセロトニンなどの神経伝達物質が働いています。
うつ病はこれらの神経伝達物質が十分に生産されず、精神状態が不安定になることで発生します。
アデノシンはこれらの神経伝達物質の生産に作用します。
「アデノシンとは」の項目で、アデノシンは特に神経細胞に多く存在すると言いましたが、アデノシンを十分に摂取すると、神経伝達物質の生産が促進され、うつ病が改善します。
軟骨は、関節と関節の間でクッションの役割を果たし、骨の成長にも関与する器官です。
激しい運動や加齢などで軟骨がすり減ると、関節が痛み炎症が生じます。
ここでもアデノシンからなるSAMeが活躍します。
SAMeは軟骨の成分となるグルコサミンやコンドロイチンの働きを活性化し、軟骨の生成を促進する効果があります。
アデノシンは発毛効果があるとして、厚生労働省が承認した成分です。
毛穴には発毛を促す毛乳頭細胞が血管と結びついた形で存在します。
アデノシンが毛乳頭細胞に入ると、「FGF-7」と呼ばれる発毛促進因子の分泌を促進します。
また、血行も促進するため、毛根に育毛に必要な栄養が運ばれ、毛髪の成長を助けます。
しじみとアデノシンの相乗効果
アデノシンは全ての動物や植物、細菌を含めた真核生物の細胞内に存在しているため、当然しじみも含有しています。
しかし、しじみでアデノシンを摂取するより、アデノシンと一緒にしじみを摂取することで発生する相乗効果の方が、はるかに良い効果を期待できます。
アデノシンの効果で上げた5つの項目のうち、何と4つもの効果で相乗効果を発揮します。
ATPによるエネルギーの生産はミトコンドリアで行われますが、ミトコンドリアのエネルギー生産を阻害するのが、体内で発生する有毒なアンモニアです。
アンモニアはたんぱく質やアミノ酸を分解すると発生する、最も小さな窒素化合物です。
そのため、細胞内のミトコンドリアを守る細胞壁を簡単に通過し、ミトコンドリアにダメージを与えます。
ミトコンドリアの活動がアンモニアで阻害されると、エネルギーの生産が落ち、疲労が蓄積します。
体内で発生したアンモニアは、血液によって肝臓に運ばれ、尿素回路によって無毒な尿素に代謝されます。
その尿素回路に必要不可欠なのが、しじみが多く含有するオルニチンです。
オルニチンを摂取すると、アンモニアの無毒化が促進されます。
その結果、ミトコンドリアの活動が復活し、ATPによるエネルギー生産が促進され、疲労回復に効果を発揮します。
肝臓は有害なアンモニアをはじめ、体内に発生した様々な有害物質を無毒化する機能があります。
しかし、加齢やストレスなどにより肝機能が低下すると、アンモニアの処理能力も衰え、体中から集められたアンモニアにより肝機能が麻痺するという悪循環に陥ります。
肝機能が麻痺すると、アデノシンが原料のATPによるグルタチオンの生産もできなくなり、解毒効果がますます悪くなります。
しじみのオルニチンで肝臓のアンモニアの処理能力を高めると、肝機能が回復し、肝臓のグルタチオンの生産が復活します。
また、肝臓でグルタチオンを生産するには、しじみの旨味成分であるグルタミン酸が必要不可欠です。
さらに、グルタチオンが有害物質の抱合を行うには、しじみが多く含有する必須ミネラルの亜鉛や、ビアミンB2の助けが必要です。
しじみの栄養素とアデノシンによって、グルタチオンの解毒効果が発揮できます。
アデノシンは神経伝達物質の生産に作用します。
一方でしじみは、神経伝達物質の生産で補酵素として作用するビタミンB6を多く含有します。
また、しじみが特に多く含有するビタミンB12は、別名「神経のビタミン」と呼ばれ、神経細胞の修復や再生に必要不可欠な栄養素です。
さらにビタミンB12は、セロトニンと表裏一体であるメラトニンの生産調整と関わりがあります。
睡眠の質はセロトニンとメラトニンの相互の増減によって決まり、メラトニンの生産が落ちるとセロトニンの生産も落ち、うつ病の原因となります。
ししみでビタミンB6とビタミンB12を補うことで、アデノシンのうつ病改善効果が高まります。
アデノシンは毛乳頭細胞に作用することで発毛を促し、育毛がなされます。
育毛にはIGF-1(インスリン様成長因子-1)による毛乳頭細胞の活性化も必要です。
このIGF-1の分泌には、成長ホルモンの分泌が必要です。
しじみのオルニチンは、その成長ホルモンの分泌を促進する成長ホルモン誘導体として作用します。
また、しじみに豊富なビタミンEはアデノシンと共に毛細血管の血流を良くする作用があります。
さらに、毛髪の合成にはしじみに豊富なビタミンB2やビタミンB6の作用も必要です。
しじみを一緒に摂取すると、アデノシンの育毛効果が一段と高まります。
まとめ
アデノシンは生体のエネルギー生産、解毒に関わるグルタチオン、軟骨の生成、神経伝達物質の生産、発毛や育毛など、様々な分野で必要不可欠な成分です。
アデノシンは全ての生物に必要な成分なので、生物が原料である食品は全てアデノシンを含有します。
しじみもアデノシンを含有しますが、むしろしじみはアデノシンの作用を高める効果の方が有効です。
しじみは、肝臓での解毒効果や、ミトコンドリアのエネルギー生産を助けるオルニチン、神経伝達物質や育毛に関わるビタミンB群が豊富で、アデノシンとの相乗効果を発揮します。
特にしじみのオルニチンとアデノシンの摂取は疲労回復効果が高まるので、疲れた時には他の食品と共に、しじみのみそ汁を添えると非常に効果的です。