しじみに含まれる亜鉛
しじみと亜鉛の関係
しじみにはたんぱく質やオルニチンをはじめとするアミノ酸、ビタミンB群の有機化合物やカルシウムなどのミネラルが豊富に含有されています。
そのミネラルの中には普段の食生活では不足しがちな亜鉛も含まれます。
しかし、カルシウムや鉄などのミネラルは普段からテレビや雑誌などで特集が組まれるなど、その役割の重要性が知られていますが、亜鉛の必要性は余り聞きません。
今回はしじみに含まれる亜鉛の役割や効果についてお話します。
亜鉛の役割
カルシウムは骨、鉄は血液を作るなどその役割が明確ですが、亜鉛と言うとどんな役割があるか知っている人は少ないのではないでしょうか?
まずは亜鉛が人体にどんな役割を果たすのかを見てみましょう。
実は亜鉛は人間が生きていく上で必要不可欠な酵素の主要な構成物質の一つなのです。
人間の体内にある酵素の種類はおよそ5000種類あるとされ、その内300種類の酵素に亜鉛が関係しています。
体の組織を作る際には、必ず体内で化学反応を起こす必要があります。
その化学反応を起こす時に使われるのが酵素で、ある物質とある物質の化学反応のスピードを増大させる役割があります。
実はこの酵素、一種類の酵素で一種類の役割しか果たしません。
例えば消化に関わる酵素のアミラーゼは人の唾液の中にあり、でんぷんをブドウ糖に変える役割を担いますが、それ以外の役目はありません。
つまり、亜鉛が関連する酵素が300種類あるということは、亜鉛が人体にもたらす作用は300種類もあるということです。
亜鉛の効果
亜鉛の効果が300種類もあるとは驚きですが、実際に私たちが知りえる亜鉛の効果はどんなものでしょうか?
細かく見ていけば切りが無いので代表的な効果だけを上げます。
皮膚は素肌だけではなく、爪や髪の毛も皮膚が変化したものです。
亜鉛は皮膚の代謝を促し、皮膚を構成するコラーゲンの合成に使用されます。
亜鉛が不足すると皮膚病に掛かりやすくなり、火傷や切り傷などの怪我の治りも遅くなります。
また髪の毛や爪の成長も阻害され、薄毛や爪割れの原因となります。
亜鉛が皮膚に有効なことは、その役割が知られる前から経験上知られていたことで、民間療法で火傷や発疹で塗り薬に亜鉛を混ぜ使用していたほどです。
亜鉛は人の粘膜を正常に保つ役割があります。
粘膜とは目や鼻や口などの感覚器官、胃や腸、大腸などの消化器官を保護し、細菌や酸などから体組織を守る役割を担います。
粘膜が弱くなると免疫力が低下し、体組織へウィルスや雑菌の侵入を許し、風邪や感染症にかかりやすくなります。
また味覚や臭覚は粘膜に付着した物質によって判断するため、粘膜が弱まると味覚や臭覚に障害が出ます。
亜鉛は人の成長を担う成長ホルモンの生成による細胞分裂の活性化や、骨の育成にも使用されます。
成長期に亜鉛が不足するとたんぱく質や骨の合成が上手くいかず身長が止まったり、第二次性徴が遅れたりするなどの影響が出ます。
また骨粗しょう症はカルシウム不足ばかりが注目されますが、亜鉛が無ければ骨は成長しません。
亜鉛は男性の精力の源となる男性ホルモン・テストステロンの生成に使われます。
テストステロンは加齢とともに減少し、不足すると精子を生産する能力が減退、それに伴い性欲自体も無くなります。
また亜鉛は女性の性にも関係し、下垂体で作られる卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの生成を促す作用があり、これらのホルモンが不足すると生理不順や不妊症に繋がります。
日本人と亜鉛
亜鉛は人体の健康維持のために必要不可欠なミネラルですが、日本人の食生活では亜鉛は慢性的に不足傾向です。
人体の亜鉛の量はたった2g。
しかし、この2gが減少しただけで体に様々な不調を引き起こします。
1日に必要な亜鉛の量は成人男性で10mg、女性で8mgですが、2015年の厚生労働省の発表では実際の摂取量は男性で9mg、若い女性に至っては6.5g程度で共に届いていません。
亜鉛の含有が多いのは牡蠣を始めとした貝類や魚の卵巣や白子、牛肉や動物のレバー、乳製品、ナッツ類や豆類などです。
しかし、これらの食品は普段の日本人の食生活であまり食べられていません。
日本人は伝統的に野菜の摂取量が多く、そこには亜鉛の吸収を妨げる食物繊維が多分に含まれます。
さらに最近は加工食品の摂取量も増加傾向にあり、使われる食品添加物の中には亜鉛を体外へ排出するリン酸やフィチン酸が含まれています。
これらの要因で日本人は慢性的に亜鉛不足なのです。
亜鉛の吸収は小腸で行われますが、実際に吸収できるのは全体の30%程度に過ぎません。
しかも加齢とともに小腸の働きも弱くなるので、必然的に亜鉛の吸収効率も悪くなります。
亜鉛は体内ではたんぱく質と結合した形で存在するので、食事の際に動物性のたんぱく質と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
特に牛乳に含まれるたんぱく質CPP(カゼインホスホペプチド)は亜鉛の吸収を高めるので、乳製品に亜鉛が多いのです。
亜鉛が多い食品の代表は牡蠣ですが、牡蠣は季節性が強く、しかも比較的高価な食品です。
一方しじみは牡蠣ほどではありませんが亜鉛を多く含んだ食品の一つで、価格も安価です。
しじみだけで一日分の亜鉛を取ることは難しいのですが、亜鉛の豊富な大豆から作られる味噌でみそ汁を作り、さらに大豆製品の豆腐を加えることで亜鉛の総量が増えます。
また、しじみをクラムチャウダーの具材にすると牛乳に含まれるCPPにより亜鉛の吸収率が上がります。
まとめ
普段の食事では亜鉛はあまり顧みられない栄養素ですが、体の各器官に影響を及ぼし健康維持には欠くことのできないミネラルです。
しかし日本人の食生活では慢性的に亜鉛は不足してしまうため、亜鉛が豊富で日本人の食生活で馴染み深いしじみなどの貝類や豆類で積極的に補う必要があります。
特にしじみは家計にも体にも優しい食品。
ぜひあなたの健康的な食生活にしじみをお役立てください。