しじみに含まれるカルシウム
日本人とカルシウム
一般的に日本人はカルシウム不足と言われています。
特に女性は加齢により女性ホルモンの分泌が少なくなると骨粗しょう症のリスクが高まります。
牛乳など乳製品の摂取が推奨されますが、日本人には牛乳を消化分解することが苦手な人も多く、カルシウムを摂取する献立作りは意外に難しいものです。
しじみをはじめとした貝類はカルシウムで出来た貝殻からも分かるように、小魚と共にカルシウムが豊富な食品の一つです。
今回はしじみに含まれるカルシウムと、その上手な摂取の方法をお話しします。
カルシウムの役割
カルシウムは骨や歯を形成する人体に必要不可欠なミネラルです。
標準的な成人男子で1.2kgのカルシウムが存在し、その99%が骨や歯でなどの骨格を作ります。
残り1%が血や筋肉、神経系内で使用され、各器官の機能に重要な役割を果たします。
厚生労働省の食事摂取基準で推奨される一日当たりのカルシウム量は成人男性で700~800mg、女性で650mgです。
一方許容上限も設けられ、男女とも2500mgです。
これはカルシウムの過剰摂取が結石や高カルシウム血症を引き起こすためです。
ただし、サプリメントや硬度の強いミネラルウォーターなどで毎日意図的に摂取しない限り、普段の食生活で取り過ぎになることはありません。
カルシウムは体の中では作ることができないミネラルなので食事で体外から摂取します。
しかし食品に含まれるカルシウム量の全てが体に吸収されるわけではありません。
カルシウムは非常に吸収率が悪いミネラルで、一番吸収率が高い牛乳や乳製品からでは50%、小魚などの魚介類からでは30%、野菜類に至っては15%程度しか吸収できません。
また加齢と共に吸収率が下がり、乳幼児で75%、成人前の成長期で30~40%、20~30代で30%、40~50代で20%、60代以上では10%しか吸収できません
一方、骨や細胞内での代謝で不要となったカルシウムは尿や汗と一緒に排出され、その量は1日当たり150mg程度に上ります。
つまり最低でも毎日150mgは体にカルシウムを補給する必要があり、厚生労働省の食事摂取基準量は吸収されないカルシウムを加味した数値です。
吸収率が悪い上に、毎日排出もされているので如何に効率よく摂取するかが大事です。
しじみのカルシウム
しじみは100g当たり16.9mgのカルシウムを含有します。
もちろんカルシウムの塊である殻の部分は食べられませんから、身の部分だけだと13gに相当する量で、可食部100gだと130mgになります。
カルシウムは自然界では単体で存在することはほとんど無く、多くは石灰岩に代表される炭酸カルシウムとして存在しています。
しじみは捕食する微生物や水中に微量に溶けている炭酸カルシウムを吸収して殻を生成し、この殻も炭酸カルシウムで出来ています。
野菜など植物に含まれるカルシウムも炭酸カルシウムかシュウ酸カルシウムです。
一方、私たち脊椎動物の骨格や牛乳に含まれているカルシウムはリン酸カルシウムです。
実はこの化合物としてのカルシウムの違いが、吸収率で大きな差を生みます。
カルシウムの吸収
私たちは食物としてカルシウムを摂取すると、胃酸によって溶かされイオン化されます。
イオン化されたカルシウムは小腸まで届くと腸壁を通過し、養分として体内に取り込まれます。
一方、胃酸でイオン化されなかったカルシウムは腸壁を通過できず、そのまま腸をすり抜け体外に排出されます。
しじみが含有する炭酸カルシウムは、学校の理科の授業で塩酸を胃酸に見立てた実験で用いられるほど非常に化学反応を起こしやすい物質です。
胃酸は炭酸カルシウムを二酸化炭素とカルシウムに分解し、二酸化炭素は体外に排出され、体内にはカルシウムイオンだけが残るため吸収率が良いのです。
ところが牛乳などが含有するリン酸カルシウムの場合、胃酸ではなかなか溶けない上に、溶けたとしても胃液の中にリンは残り、カルシウムと一緒に腸まで運ばれます。
イオン化されたカルシウムもリンも小腸で吸収されますが、リンとカルシウムは非常に結合しやすい物質で腸まで届く間に再結合する割合も多いのです。
再結合したリン酸カルシウムは腸壁を通過できず、そのまま体外に排出されるので結果として吸収率が悪くなります。
しじみのカルシウムの吸収率を高める方法
しじみが含有する炭酸カルシウムは、体内への吸収率が高いのはご理解いただけたでしょう。
では、しじみのカルシウムをより効率的に体内に吸収するには、他にどんな栄養素と組み合わせれば良いのでしょうか。
カルシウムの吸収を高め骨の形成を助ける栄養素は以下の4つです。
クエン酸はレモンなどの果汁に含まれ、酢酸はお酢の主成分です。
どちらもカルシウムを溶かす作用があり、胃酸だけではなかなか溶けないカルシウムを少しでも事前にイオン化することで、胃の負担を減らし小腸での吸収量を増やします。
ビタミンDは小腸でのカルシウムの吸収を補助する栄養素で、カルシウムが骨に沈着する際にも使用されます。
ビタミンDは体内で生産が可能で皮膚が紫外線を浴びると生成されますが、食事でも摂取が可能です。
ビタミンDは脂溶性のビタミンなので、油分と一緒に摂取すると吸収率が高まります。
マグネシウムは体に必要不可欠な必須ミネラルの一つです。
マグネシウムは骨の正常な代謝を促す作用があるばかりか、細胞内のカルシウム量を調整する役割を担います。
マグネシウムが不足すると細胞内のカルシウム量をコントロールできなくなり、カルシウム不足と感じた細胞は骨からカルシウムを奪うため、結果的に骨を弱くします。
カルシウム2に対しマグネシウム1に割合で摂取するのが望ましい分量です。
骨の構成物質はカルシウムだけではありません。
骨の70%がリン酸カルシウムですが、カルシウムだけで作る骨は非常にもろく、その骨に弾力を与えているのがたんぱく質のコラーゲンで、全体の23%に相当します。
ビタミンCはそのコラーゲンの生産を促進する作用があり、丈夫な骨を作るのには必要な栄養素です。
しじみのカルシウムを効率よく摂取する料理
カルシウムの吸収を高めるビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれます。
しじみのみそ汁の具に旬のキノコを一緒に入れれば腸内でのカルシウムの吸収が高まります。
また小松菜やほうれん草はカルシウムもビタミンCも多い食材です。
和え物の具にしじみの身を添え、酢で味付けすれば、野菜やしじみに含まれるカルシウムがイオン化し吸収率が高まります。
まとめ
しじみのカルシウムだけで一日に必要な摂取量を満たすのは難しいですが、他の食材に比べると非常に吸収率が高い炭酸カルシウムなので効率よくカルシウムを摂取できます。
カルシウム自体が吸収率の悪いミネラルなので、毎日の食卓にカルシウムが豊富なしじみのみそ汁を意識的に添えることで、健康生活の一助となるのです。