しじみの安眠効果
しじみは安眠効果を発揮する?
しじみは二日酔いや疲労回復に効果があるオルニチンが豊富に含まれている手軽な食材として注目を浴びています。
実はしじみには安眠効果があり、オルニチン以外にアデノシンやグリシン、トリプトファン、メチオニンなど睡眠に関わる栄養素を数多く含有しています。
さらにビタミンB群やカルシウムなどのミネラルがその働きを補ってくれるのです。
今回はしじみに含まれる栄養素ごとに、人を安眠に導く効果を詳しく説明していきます。
5つの不眠要因
さてしじみの栄養素を説明する前に、人はなぜ不眠になるのかを知らなければなりません。
現在の科学では以下の5つが睡眠を妨げる要因とされます。
体の一部がケガや病気で不具合が生じ、寝つきが悪くなると不眠になります。
例えば関節痛などの炎症で痛みがひどかったり、風邪や喘息などで咳が止まらなかったりすると寝つきが悪くなり、痛みや発作で起きてしまい十分な休養が取れません。
仕事や夜更かしなどで生活のリズムが狂うと、体内時計も狂います。
日勤や夜勤が交互にあったり、海外出張での時差ボケだったり、昼夜逆転した生活を送ったりすると引き起こされ、眠りたくても眠れないといった症状が発生します。
普段の生活で発生する緊張や不安がストレスとなり、不眠に繋がります。
特に仕事や人間関係で行き詰まるとストレスを発症しやすく、寝つきが悪くなり、眠りも浅くなります。
うつ病などの精神障害を発症すると興奮状態や妄想、また常に不安を抱き不眠になります。
また神経伝達物質に異常をきたすので、これも不眠の要因です。
何らかの薬やそれに類似する物質を摂取したため、副作用で不眠になります。
コーヒーのカフェインがその代表で、アルコールも飲み過ぎれば脳が興奮状態になり眠れなくなります。
しじみには5つの不眠要因を解決する栄養素が揃っている
しじみにはオルニチンをはじめタンパク質、アデノシンやグリシン、トリプトファン、メチオニンなどの各種アミノ酸、ビタミンB群、カルシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれています。
何と驚くことに、しじみに含まれるこれらの栄養素は5つの不眠要因を遂一解決してくれる物質なのです。
いったいしじみのどの栄養素が5つの不眠要因に対応するのでしょう?
そのメカニズムを含め詳しく解説します。
身体的要因にはオルチニンやビタミンB群、タンパク質が有効
身体的要因は病気や炎症がその原因なので、それを治癒する効果のあるオルチニンやビタミンB群が有効です。
オルニチンは成長ホルモン誘導体です。
成長ホルモンは代謝を促し、ケガや炎症の治癒を行います。
成長ホルモンは脳の下垂体前葉から分泌されるのですが、睡眠中が最も多く分泌されます。
しかし睡眠が足りないとケガや炎症の治癒に必要な成長ホルモンは十分に分泌されません。
しじみに含まれるオルニチンを摂取することで、成長ホルモンの分泌を増やしケガや炎症の治癒がスムーズに進み、それに伴う痛みが緩和され安眠がもたらされます。
ビタミンB群は体の新陳代謝を促しエネルギーを作る働きがあり、また筋肉を作るタンパク質の代謝も行います。
このビタミンB群が不足すると私たちが知っているあらゆる病気が引き起こされると言っても過言ではありません。
新陳代謝が活発になると代謝の際に発生するエネルギーで免疫力も向上し、病気の治癒力が高まります。
またビタミンB群は関節痛や筋肉痛といった炎症を抑える効果もあるので、炎症の痛さで眠れないといった症状も緩和されます
タンパク質は筋肉を作るアミノ酸に分解され、病気やケガで傷んだ組織を修復するのに使用されます。
生理学的要因にはトリプトファンが有効
生理的要因には体内時計と関係が深いセロトニンやメラトニンを調整する必要があります。
セロトニンは人が覚醒している時に増え、寝ている時には減ります。
一方メラトニンは人が覚醒している時に減り、寝ている時に増えます。
セロトニンやメラトニンの増減こそ体内時計であり、生活のリズムでこれが狂うとセロトニンとメラトニンは共に減少し、それが慢性化し不眠になります。
これを解決するのがしじみに含まれるトリプトファンです。
しじみに含まれるトリプトファンは必須アミノ酸の一つでセロトニンやメラトニンを作る材料です。
トリプトファンは吸収率が悪い栄養素で、吸収率を上げるためにはビタミンB群、鉄分、ブドウ糖が必要ですが、しじみにはその内ビタミンB群と鉄分が豊富に含まれます。
ブドウ糖はコメやパンなどの主食で補えるので、しじみは生理的要因の不眠に大変有効な食品です。
心理的要因はオルチニン、カルシウム、グリシンが有効
心理的要因で寝つきが悪い場合にはストレスを取り除く必要があります。
しじみに含まれるオルチニン、カルシウム、グリシンにはストレスを緩和する効果があります。
ストレスを感じると人はコルチゾールというストレスホルモンを盛んに分泌します。
このコレチゾールは交感神経を刺激し、さらに人を睡眠に誘う副交感神経の活動を誘発するメラトニンの分泌も妨げます。
オルチニンはこのコレチゾールの分泌を減少させる働きが確認されています。
この効果により寝つきの際に交感神経から副交感神経への移行がスムーズになります。
日本人はカルシウム不足と言われています。
血中カルシム濃度が低くなると、それによって神経や感情のコントロールが利かなくなりストレスを生み、不眠を引き起こします。
しじみに豊富に含まれるカルシウムを補うことでカルシウム不足によるストレス回避ができます。
人はストレスを感じると脳が常に興奮状態になります。
アミノ酸の一つであるグリシンは抑制性の神経伝達物質で、この興奮した脳を鎮静化させリラックスさせる効果があります。
また人は眠りに就く時の生理現象で体深部の体温を下げますが、深部の体温を放出するために体の表面温度を上げます。
グリシンは血管拡張作用があり、血流量を増やし体の表面温度を上げ、スムーズに睡眠を促します。
精神医学的要因にはメチオニンやビタミンB群が有効
精神医学的な睡眠障害にはうつ病や神経伝達物質の異常が上げられます。
これらの症状にはしじみに含まれるメチオニンやビタミンB12が有効です。
うつ病の原因となる悲壮感を引き起こすのが神経伝達物質であるヒスタミンです。
ヒスタミンが脳内に溜まると強迫感や圧迫感に支配されてしまいます。
メチオニンはヒスタミンの濃度を下げる効果があり、さらに快楽を引き起こす神経伝達物質であるドーパミンを作る原料ともなります。
この2つの作用で精神的な不安を解消し安眠を促します。
しじみに含まれるビタミンB群の中でもビタミンB12は特に豊富です。
ビタミンB12は別名「脳のビタミン」と呼ばれ、末梢神経を整え、脳細胞や脳神経の再生や修復に使われます。
また神経の伝達をスムーズにするので神経症で引き起こされる神経系の異常を改善し、不眠が緩和されます。
薬理学的要因にはアデノシン、オルチニン
薬理学的要因による不眠は身近なところでコーヒーのカフェインやお酒のアルコールが挙げられます。
実はカフェインやアルコールが不眠の原因となるのは睡眠誘発物質であるアデノシンの分泌を抑えてしまうからなのです。
カフェインやアルコールといった外的要因に有効なのがしじみに含まれるアデノシンやオルチニンです。
しじみにはカフェインやアルコールにより体内で抑制されてしまうアデノシンが含まれています。
体内で分泌されたアデノシンが睡眠を誘発するには脳内のA2A受容体に吸収される必要がありますが、カフェインはこの受容体の働きを阻害します。
一方アデノシンは他の覚醒物質のヒスタミン自体を抑制する力もあり、外部からアデノシンを摂取することで拮抗が崩れ、眠気を誘います。
一方アルコールの摂取はアデノシンの濃度を上げる力があり、飲酒で眠たくなるのはこれが原因です。
しかし睡眠薬代わりにお酒を飲み続けると耐性が付き、今度はアデノシンが分泌されなくなり不眠症となるのです。
この不足したアデノシンを補うことで眠気が生じます。
アルコールによる睡眠は、その分解の為に睡眠中も肝臓をフル稼働させなければならず、疲れが取れるどころか逆に体全体に疲労が蓄積します。
オルチニンはこの時肝臓で発生するアンモニアの分解を速める力があり、同時に肝細胞のミトコンドリアの働きを活性化させエネルギー効率を高め、肝臓に掛かる負担を軽減し、アルコール摂取後の睡眠が引き起こす疲労感を緩和するので、安眠がもたらされます。
まとめ
しじみは安眠効果があると世間で知られていますが、こうして細かく見ていくとしじみに含まれる多様な栄養素が、各症状で効率的に作用することがご理解いただけたかと思います。
しじみによる安眠効果は即効性のあるものから、漢方薬のようにじわじわと改善してゆくものまで様々です。
睡眠薬では副作用が心配ですが、しじみで副作用が出ることはありません。
まさに自然が私たちに与えてくれた、しかも美味しい天然の睡眠薬と言えるでしょう。