しじみは花粉症に効く
しじみの栄養素が花粉症対策になる?
春先になるとニュースで話題になるのがスギ花粉症。
スギ花粉をはじめとした花粉症患者は推定で全国に3000万人、実に4人に1人は花粉症患者で、まさに国民病と言っても過言ではありません。
一度花粉症になると完治が難しいとされ、風邪の症状に似たくしゃみ、鼻水、鼻づまりと目のかゆみに、花粉が飛散している間悩まされることになります。
にわかには信じてもらえないかもしれませんが、実はしじみは花粉症対策になる栄養素を多く含有していることをご存知ですか?
今回はしじみと花粉症の関係についてお話しします。
花粉症とは
花粉症とは植物の花粉が体内に吸収されることで引き起こされるアレルギー反応です。
花粉症の代表はスギですが、ヒノキやカモガヤ、イネ、ブタクサやヨモギなどの約60種近くの植物の花粉でもアレルギー反応を起こす場合があり、一度花粉症に掛かると他の花粉でもアレルギー反応を起こす確率が高まります。
花の無い冬を除けば、ほぼ一年中花粉症に掛かるリスクがあります。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが花粉症の4大症状です。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりは風邪に似た症状ですが、多くは発熱を伴わず、鼻水は水のようにサラサラです。
また目のかゆみの場合、目に異物感が生じたり、涙目になったり、目やにが多発するなどの症状を併発します。
他に耳の奥のかゆみ、頭痛や吐き気、微熱といった症状が出る場合もあり、これらの症状から睡眠不足や集中力の欠如、ストレスの増大などを引き起こします。
花粉症の原理は、本来無害である植物の花粉に対し、免疫系がウィルスや細菌などと同じ病原体と認識して過剰反応を起こすために発生するアレルギー反応です。
よく「花粉症は免疫が弱いからだ」と認識している方がいますが、実は逆で花粉に対する免疫が強すぎるため発生する症状です。
花粉が呼吸などで体内に侵入すると、鼻や口の粘膜に付着します。
粘膜に付着した物質はそれが人体に有害な物質かどうかを免疫系が判断し、有害な物質であればくしゃみや鼻水などで未然にその侵入を防ごうとします。
その判断の基準となるのが花粉をはじめウィルスや細菌を構成しているたんぱく質です。
粘液にたんぱく質が付着すると分解され、マクロファージ(貪食細胞)に取り込まれ、それが異物かどうかの判断が行われます。
この情報はヘルパーT細胞を仲介して異物に対し抗体(免疫グロブリン)を作るB細胞に伝えられ、5種類の抗体の中からその異物に対応する抗体を作り出します。
この抗体が各細胞に働きかけることで、様々な方法で異物を体外から排除する生理反応を起こします。
抗体はIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類に分類されますが、花粉症に関連する抗体はIgEです。
IgEは血液や粘膜にある肥満細胞や好塩基球と結合し、再び同じたんぱく質が粘膜に付着とすぐさま反応し、神経伝達物質を放出して体外に排出する生理反応を引き起こします。
花粉症の場合、花粉のたんぱく質が異物としてIgGが反応するように既にプログラミングされてしまっており、IgEが肥満細胞に結び付くことで細胞内にある生理機能を誘発するヒスタミンが放出されます。
ヒスタミンは神経伝達物質で、肥満細胞以外にも脳、肝臓や腎臓などに存在し、それぞれの生理機能を担います。
花粉症の場合、花粉が粘膜に付着するとIgEを通して肥満細胞が含有するヒスタミンを大量に放出させ、各器官の細胞のヒスタミン受容体にヒスタミンが付着するとくしゃみ、鼻水、涙、炎症などを引き起こし、花粉を体内にこれ以上侵入させないように試みます。
つまり、この大量に分泌されるヒスタミンが花粉症の諸症状を引き起こすのです。
話は少し逸れますが、肥満細胞とは実際の肥満とは関係なく、細胞の形が肥満しているように見えるので付いた名前で、肥満の人が痩せても花粉症の症状が改善するわけではありません。
花粉症の諸症状はヒスタミンの大量分泌が原因ですが、ヒスタミン自体は体に必要不可欠な神経伝達物質です。
ヒスタミンは筋肉の収縮、血圧の降下、血管の拡張、腺分泌の促進などに関わりがあり、さらに神経伝達物質として脳内の覚醒状態の維持や他の神経伝達物質の調整など、その役割は多岐に渡ります。
基本的には外部からの刺激が無いと反応しない物質なので、ケガや病原体が体内に侵入するなど特別なことが起こらない限り、生体内の生理現象で正常に作用しています。
花粉症の症状への対処
花粉症の諸症状はヒスタミンの過剰分泌が原因なので、このヒスタミンの活動を何らかの方法で止めることで症状は治まります。
ヒスタミンの活動を抑えるには、以下の3つが考えられます。
ヒスタミンの分泌を抑える方法として用いられるのは、アレルギー物質で過剰に反応する免疫機能を低下させるステロイド剤です。
ステロイド剤を用いると花粉症に対する免疫反応が低下するので症状は緩和されますが、他の免疫力も同時に低下するので病気に掛かりやすくなります。
また長期に渡る服用は副作用も強く、よほどひどい限りはステロイド剤の常用はお勧めできません。
現在花粉症の症状を和らげる薬として主流なのが、風邪薬でも用いられる抗ヒスタミン剤です。
抗ヒスタミン剤はヒスタミンに先駆けてヒスタミン受容体に取り付きブロックすることで、ヒスタミンが誘発する花粉症の諸症状を未然に防ぎます。
しかし、ヒスタミン受容体の中には覚醒状態に関与するものもあるので、ここをブロックされると副作用として眠気に襲われます。
また花粉症の症状が現れる前に服用しないと効果が半減します。
一度分泌されたヒスタミンは体内で何らかの方法で回収しなければなりまません。
実は体内にはヒスタミンを分解するDAO(ジアミンオキシターゼ酵素)と呼ばれる酵素があり、ヒスタミンを代謝してアセトアルデヒドとアンモニアと過酸化水素を生成します。
皮肉なことにヒスタミンは体内に必要不可欠ですが、ヒスタミンを分解すると人体に有害な物質が生成されます。
しじみの栄養素と花粉症の関係
実はしじみの栄養素にはヒスタミンを分解するDAOの合成に必要な成分が多量に含まれています。
DAOの合成に必要な栄養素は
ビタミンB6
ビタミンC
マグネシウム
亜鉛
銅
ですが、しじみはビタミンC以外の成分が非常に豊富です。
DAOを多く生産できれば、その分ヒスタミンの分解が早まります。
ヒスタミンを分解すると人体に有害なセトアルデヒドとアンモニアと過酸化水素が生まれるため、その代謝は肝臓で行われます。
肝臓はアセトアルデヒドとアンモニアと過酸化水素を更に分解し、最終的に人体に無害な尿素や水、酸素に変換します。
肝臓の機能が弱まると、DAOの働きも弱くなり、過剰に分泌されたヒスタミンは何時までも体内に残ってしまいます。
オルニチンが肝機能を活性化
しじみは肝臓でアンモニアの分解を助けるオルニチンを豊富に含有しています。
ヒスタミンを代謝した時に生じるアセトアルデヒドは、アルコールを分解した時にも生じる物質で、アセトアルデヒドも肝臓でアセトアルデヒド脱水素酵素などでの分解を経て最終的に水と二酸化酸素に分解されます。
オルニチンは肝臓の細胞内にありエネルギーを供給するミトコンドリアの活動を活性化する効果もあり、肝臓に活力を与えヒスタミンの分解で発生するアセトアルデヒドの分解も早めます。
まとめ
花粉症は本来人体に無害である花粉を免疫系が異物として排除しようとするために引き起こされる症状で、くしゃ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの諸症状はヒスタミンが肥満細胞から大量に分泌されることが原因です。
花粉症は一度掛かってしまうと自然治癒が難しく、対処療法でヒスタミンの力を抑え症状を緩和する必要があります。
しじみはヒスタミン分解酵素のDAOを体内で合成する際に必要なビタミンB6、マグネシウム、亜鉛、銅を豊富に含有しています。
またヒスタミンをDAOが分解する場所は肝臓なので、しじみが豊富に含有するオルニチンが肝臓に活力を与えることでヒスタミンの分解が早まり、花粉症の症状が緩和します。
しじみだけで花粉症が完治できるわけではありませんが、花粉症の季節にしじみのみそ汁を毎日摂ることで、副作用なく辛い花粉症の症状が緩和されます。